第1回針穴写真塾のレジメ

開催日:2000.6.18 講師:Fumio Hanano, Photographer

1.はじめに
原理:光の回析現象といわれているが、光は波か粒子かという物理学の理論とかかわっている。
焦点距離:針穴からフィルムまでの距離
画角:焦点距離とフィルムサイズによって決まる。
焦点距離30mmでフィルムの縦の長さが60mmだと縦方向で90度の画角になる。横が45mmだと横方向は60度。60x60だったら縦横ともに90度。焦点距離を縮めると100度120度も可能。
理想的な針穴のサイズ:焦点距離x0.0073
  30mm x 0.0073 =0.219mm
穴を小さくするほど解像度が上がるが、コントラストが落ちてくる。解像度とコントラストのバランスから計算式が導かれている。
ピント:針穴の直前から遠方まで均等にピントがあう。

2.穴あけ

 0.2mmを目標とする場合。
  1. なるべく薄いアルミ缶を2x2センチくらいに切る。
  2. 裏と表からサンドペーパー(200番くらい)でこすってアルミを薄くする。
  3. 針で0.17mmくらいの穴を開ける(わたしは0.2mmのゲージがついたルーペでチェックしていますが、普通のルーペとアクリル定規でも目分量で多少はわかりますよ)。
  4. アルミ両面をサンドペーパー(600〜800番)でゴシゴシこすってどんどん薄くします。
  5. 小型の電気ドリル(安物)の先に綿棒をくわえさせて、コンパウンドで穴とその周囲をえんえんと磨きます。コンパウンドは効かなくなるので時々新しいのをつけること。穴の周辺部はピカピカになってきます。力を入れると破れるので注意。0.17mmの穴のサイズが0.2mmまで大きくなるまで磨きます。これで穴のエッジ部分はカミソリの刃のような状態になっているはず。
  6. 穴の状態を引き伸ばし機で投影して確認する。透過原稿ユニットのついたスキャナも使えるでしょう。
  7. 穴の裏面を黒のマジックで塗る。表面張力で穴が塞がってしまうので、針で軽く突いて幕をやぶる。

3.F値について(一般)
F値とは、F1を明るさの基準した相対的な指数。数値が大きくなるほど暗くなる。絞りの直径が半分(F2)になるとその口径面積は4分の1になるので明るさも4分の1。これでは、露出を決める基準としては不便なのでその中間絞り値を求める(√2=1.4)とF1.4。F1とF1.4の倍数を並べていくと次のような値になる。
F1  1.4  2  2.8  4  5.6  8  11  16  22  32  44
つまりF値とは絞りの直径を基準にしていることがわかる。そして1段について光量は半分になるので、2段で1/4、3段で1/8、4段で1/16といった具合に光量が減少していく。


4.針穴写真機のF値の求め方
針穴写真機のF値は穴の直径と焦点距離によって求められる。
焦点距離÷針穴の直径=f値 例:10mm(焦点距離)÷0.1mm(針穴の直径)=f100
F 11 16 22 32 44 64 88 128 196
256 128 64 32 16 8 4 2 1
F=150は、F16の約100分の1。つまり露出計で得られたF16のときのシャッタースピードに100をかけた露光時間が適正露出になる。(e.g.1/125だったら1秒、1/30は3秒、1/1のときは100秒。)
※単体露出計がなくても露出の表示されるカメラを携帯すると便利。


5.露光時間
おおよその露光時間(F150の場合)
       雨   曇り   晴れ   快晴
感度100   16    4     2    1
感度400   4    1    1/2   1/4
※Kodak T400CNは、ISO=25~800までの感度の幅がある(可変感度)ので、曇りまでは1秒で撮ることができる。他のフィルムのは感度100クラスが使いやすい。


針穴写真機ペーパーネガ編(参考)
フィルムの代わりに印画紙を使います。印画紙のサイズにあわせて大きなカメラを作ることができ、サイズが大きいので比較的シャープな写真が撮れます。
構造や原理はHOLGA改造針穴写真機と同じです。印画紙が入る大きさの空き缶や箱を用意して針穴をつけるだけ。印画紙の感度はISO=6と大変低いので露光時間もそれだけかかります。室内だと30分〜数時間ということもあります。

印画紙(ネガ)の現像
準備するもの
セーフライト(赤電球でも可)、現像バッド(皿です)3枚、現像液、停止液、定着液
3枚のバッドに現像液、停止液、定着液を入れます。
セーフライトのもとで印画紙を出します。
現像液に印画紙を裏側にして浸け、すぐに裏返してバッドをゆすります。1〜3分間でネガ像が出てきます。停止液に1分浸け、定着液に1分間。水洗5分間(定着液によってはもっと長い)。ドライヤーまたは自然乾燥でペーパーネガのでき上がり。

プリント
セーフライトをつけて作業します。ネガと同じ(または大きい)サイズの印画紙を平らな台に乗せます。それに乳剤面がくっつくようにペーパーネガを重ねてガラス板で押さえつけます。上から電気スタンドや引き伸ばし機の光をあてます。数十秒かかると思います。露光を終えた印画紙を上の要領で現像します。濃すぎるときは露光時間を減らし、薄すぎるときは露光時間を増やして焼き直します。
このように書くと簡単そうですが、どの印画紙をネガに使うか、露光時間の調整テクニックなど難しいところもあります。芸術的な表現として針穴写真が撮られるようになったのは1960年代からなのだそうですが、多くの針穴写真家はフィルムで撮っています。それは階調のコントロールが難しいからだと思います。国内で開催される針穴ワークショップでペーパーネガを指導してはいますが、指導している人たちのほとんどはフィルムで作品を撮っています。フィルム送りのできる構造のカメラを自作することが難しいという理由でペーパーネガのカメラを作っているのが現状でしょう。興味がありましたら挑戦してみるのも楽しいかと思います。


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